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藪寿司

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「しらかば黒書」

kokusyo

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発行 : 2000年11月15日
著者 : 久保陽子
監修 : 若林 明
発行所 : しらかば社
印刷所 : 平河工業社
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            著者の前書き          

                            1995.8.20

「しらかば」派は、1960年から1973年まで存続したアナ-キスト組織で、伊藤聡、大野良子、久保陽子の3人の政治局員によって運営されていた。そのおおまかな歴史は以下の通りである。

   1960  伊藤聡、大野良子、同人「しらかば」社を創設
   1963  久保陽子、同人「しらかば」社に事務局員として就職
   1967  同人「しらかば」社から「しらかば救援隊」に改組
   1968  下部大衆組織「共産主義者同盟F7」を結成
   1972  「共産主義者同盟F7」、伊藤聡を除名  大野良子、自殺
   1973  「しらかば救援隊」崩壊

「しらかば」派は、組織崩壊後も物質的、理論的遺産をめぐって、他組織や組織内残党諸派の間で暗闘を現在に至るまで繰り返して来た。そのような不毛な負の総括だけではなく、非常に困難であっても正の総括も必要なのであろう。私は20年前から数回にわたって伊藤聡に、それを要請して来た。しかし彼の同意は得られなかった。

「しらかば」派の理論的・組織的指導者である伊藤聡は当年50才の内科開業医で、本名は桝田礼三、愛称はレイ、ボクサー名は伊藤悟、その他沢山の偽名を持っている。彼の中国名は金国男、ヨーロッパや東南アジアでは「ドクターキム」と呼ばれていた。日本名は金田国男、高橋春子、ドクタ-Qと呼ばれることもある。

私はレイと同じ50才の精神科医である。私は過去20年以上も、彼が3才から書き続けている日記のすべてを何度も読み返し、彼が書いた論文・小説・随想・詩、そして楽譜や絵画、写真、ビデオテープ、その他の作品を検証した。彼の親戚、友人、同僚、知人、教師などの証言を集めた。

1980年、私はレイの伝記「あるアナーキストの半生」を書き上げた。しかし彼はその出版を許可しなかった。

1991年妻に先立たれたレイは自らも死を覚悟している風情であった。私は彼に2度目の出版許可を申し出たが再び拒否された。

1993年11月14日(日) 午前8時彼の家に11人の警官が踏み込んで来た。脅迫容疑による強制家宅捜索であった。450坪の敷地内にある2軒の住宅とそしてガレージ、2台の車、彼の診療所も徹底した捜索が行われた。その日は夜まで彼は十和田警察署で被疑者として取調べを受けた。取調べは11月23日まで続いた。

1993年12月28日、私は青森県十和田市の彼の自宅を訪れた。「現存する資料はすべて項目別にファイルしてある。すべて君の好きなようにしてもいい。どうせ、警察にすべて知られたことだし、今さら隠しても仕方がない。ただし、ひとつだけ条件がある。出版はボクが50才に達した後にして欲しい」
 私はそれに同意した。レイはシンガポール旅行に出かけて行った。私は彼の旅行中に彼の家に1週間滞在して数多くの未知の資料を手に入れた。そして私は「あるアナーキストの半生」を書きかえる作業を1年半続けた。

1995年8月、2冊の本が完成した。パソコン通信版の「しらかば白書」と、文庫版の「しらかば黒書」である。「しらかば白書」は完成と同時に上梓したが、「しらかば黒書」は現在のところ出版の見込みは立っていない。

本書の文中で、ゴシック体で書かれているものは、レイの日記、手紙、録音などからの引用である。荒唐無稽な「しらかば白書」を既に読まれた方はご存知であろうが、このゴシック体の記述には、虚偽が多く、色々のトリックが仕掛けられていることに注意されたい。
レイの履歴書は以下の通りである。

   1945年2月  青森県下北郡大湊町で出生
   1957年3月  青森県下北郡大湊町立大平小学校卒業
   1960年3月  東京都豊島区立駒込中学校卒業
   1963年3月  東京都立小石川高校卒業
   1969年3月  慈恵医大卒業 同大付属病院第1内科勤務
   1973年8月  同病院を退職
            青森県むつ市大平町で桝田医院を開業
   1979年4月  青森県十和田私立中央病院に勤務
   1982年4月  同病院を退職
            青森県十和田市にて北里内科クリニックを開業 現在に至る


本書の作成にあたって、膨大な資料のデ-タベ-ス化にご協力をいただいた若林明氏、レイの精神鑑定にご協力をいただいた具志堅誠栄氏以下7人の精神科医の皆さんに、深く感謝の意を表明する。

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